「ケラチントリートメント」という言葉はよく耳にするようになりました。しかし、同じ「ケラチン」を謳うトリートメントでも、使われている成分の種類によって効果は大きく異なります。
この記事では、一般的な加水分解ケラチンと「活性ケラチン」の違い、そして活性ケラチンが髪の内部でどのように機能するのかを、成分の仕組みから解説します。
髪がダメージを受けるとき、内部で何が起きているのか
まず前提として、ダメージ毛の構造を理解しておく必要があります。
健康な髪の主成分はケラチンタンパク質で、髪全体の約80〜95%を占めます。ケラチンはシステインというアミノ酸を多く含んでおり、隣り合うシステイン同士がジスルフィド結合(SS結合)を形成することで、螺旋状の構造が保たれています。この構造が髪の強度・弾力・形状の基盤です。
カラーリングやブリーチ、縮毛矯正を繰り返すと、以下の変化が起きます。
- SS結合が切断・再結合を繰り返し、結合密度が低下する
- アルカリ剤の影響でタンパク質の骨格自体が変性する
- キューティクルが開いた状態が続き、コルテックス(内部)のタンパクが流出する
つまり「ダメージ毛」とは、内部にタンパク質の空洞が生じた状態です。この空洞が広がるほど、パサつき・広がり・切れ毛・ツヤのなさとして現れます。
加水分解ケラチンと活性ケラチンの違い
一般的なトリートメントに配合される加水分解ケラチン(PPT:ポリペプチド)は、ケラチンタンパクを酸や酵素で分解し低分子化したものです。分子量が小さい(数百〜1,000 Da以下)ため毛髪への浸透力はありますが、構造を持たない断片化したペプチドのため、洗い流しによって流出しやすく、持続性に限界があります。
一方、活性ケラチンは分子量・立体構造・反応性の3点で異なります。
| 加水分解ケラチン(PPT) | 活性ケラチン | |
|---|---|---|
| 分子量 | 数百〜1,000 Da以下 | 2,000〜10,000 Da程度 |
| 立体構造 | なし(断片化) | α-ヘリックス構造を部分的に保持 |
| 反応性 | 低い | チオール基(SH基)が活性状態 |
| 結合の種類 | 水素結合・静電結合のみ | SS結合・水素結合・静電結合 |
| 持続性 | 短い(洗髪で流出) | 長い(共有結合で定着) |
髪の内部で起きること
活性ケラチンが毛髪に作用するプロセスは3段階です。
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①浸透
最適化された分子量(2,000〜10,000 Da)により、キューティクルの隙間からコルテックスへ浸透します。加水分解ケラチンより分子量が大きい分、コルテックス内に長く留まる特性があります。
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②定着
コルテックス内でSH基が髪の残存システインのSH基と酸化的に反応し、SS結合が新たに形成されます。この反応は熱によって促進されるため、適切な温度のアイロン処理が重要です。
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③空洞の補填
ダメージによって生じたタンパク質の空洞に活性ケラチンが入り込み、構造を補強します。毛髪の密度が高まり、キューティクルの閉じた状態が保たれやすくなります。
結果として、ツヤ・まとまり・強度の向上が得られます。縮毛矯正のようにクセを固定するものではなく、髪本来の構造を補強することで自然な手触りとまとまりを引き出すアプローチです。
活性ケラチンが向いている状態
- カラー・ブリーチを繰り返してパサつきが出ている
- 手触りが以前と変わった(ザラつき・ゴワつき)
- ツヤがなくなってきた
- 細毛・軟毛でボリュームが出にくい
- 縮毛矯正はしたくないが、まとまりは出したい
一方、強いクセや縮れを根本的に伸ばしたい場合は縮毛矯正の方が適しています。活性ケラチンはクセを化学的に固定する作用はなく、あくまで髪の構造補強によるまとまり改善です。
注意点
施術の頻度と過剰補填
活性ケラチンは適切な量で効果を発揮しますが、過剰に補填すると髪が硬くなる・重くなるという状態になる場合があります。特に細毛・軟毛は少量で反応しやすいため、毛髪の状態に合わせた濃度・量の調整が必要です。
熱処理の温度管理
SS結合の形成を促進するためには適切な熱が必要ですが、過度な高温は逆にタンパク変性を起こします。毛髪の状態に合わせた温度管理が仕上がりを左右します。
カラーとの組み合わせ
活性ケラチン施術はpH中性域で行うものが多く、グリオキシル酸(酸熱)と異なりカラーへの色落ち影響は軽微です。ただし施術後のヘアカラーとの順番は、サロンで個別に確認することをお勧めします。
CLASSEでの活性ケラチンの使い方
CLASSEでは、活性ケラチンを縮毛矯正・カラー・パーマを含むすべての薬剤メニューに標準配合しています。
施術のたびに化学的なダメージが生じる薬剤処理において、活性ケラチンを同時に補給することで、処理後の毛髪状態を整えます。「ケアしながら施術する」という考え方が基本にあります。
まとめ
- 活性ケラチンは反応性のあるSH基を持ち、髪のケラチンとSS結合を形成する
- 加水分解ケラチン(PPT)と異なり、共有結合で定着するため持続性が高い
- ダメージで生じた内部の空洞を補填し、ツヤ・強度・まとまりを向上させる
- クセを固定するのではなく、髪本来の構造を補強するアプローチ
- 細毛・軟毛は過剰補填に注意。温度管理と量の調整が仕上がりに影響する
CLASSE(クラス)について
東京都港区南青山/表参道駅徒歩3分
髪質改善に特化した完全マンツーマンの美容室です。使用する薬剤の成分・作用機序にこだわり、根拠のある施術をご提供しています。
- 髪質改善・縮毛矯正:ダメージ毛・うねり・広がりへのアプローチ
- エイジングケア:加齢による髪のハリ・コシ・ツヤの変化に対応
- 頭皮・健康:幹細胞培養上清液によるスカルプケアも対応
参考文献
Dekkers E, et al. “Keratin protein interactions in human hair.” Journal of Cosmetic Science, 2011.
Robbins CR. “Chemical and Physical Behavior of Human Hair.” 5th ed. Springer, 2012.
Fernandes MM, et al. “Functional keratin for hair treatment.” Cosmetics, 2019.

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